ぼくはこの「ごついもの」が秘める怖いような物語の塊りに怯(ひる)み、これをしばらく避けて、また、ヘンリー・ジェイムズ、メルヴィル、ホイットマン、ポーというふうにアメリカの時を溯っていったものだった(第429夜・第300夜など参照)。
ヨクナパトーファ・サーガ。
ヨクナパトーファ・クロニクル。
フォークナーの多くの作品は「ヨクナパトーファ郡」という架空の地域を舞台にしている。インディアンの言葉で「水が平地をゆるやかに流れていく」という意味らしい。ミシシッピ州西北部、広さ2400平方マイル、1936年時点で人口は15611人。うち白人が6298人、黒人が9313人。
そこにジェファスンという郡役所のある町があり、フレンチマン・ベンドというコミュニティがある。ここは「体面」をつくっているコミュニティで(いまの日本のように)、過去の歴史の都合のいいところ以外はすべて放擲するような連中ばかりがひしめいていた。ここには退屈、溺愛、暴力、保身、偽りの家庭、いいかげんな教育が、ぐるぐる渦巻いている(いまの日本のように)。
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